透析困難症/透析低血圧について

透析困難症について

透析を受ける患者さんの心身の安楽を妨げる病態の一つに、透析困難症があります。
透析困難症とは、透析中に発生する一過性の透析合併症であり、血圧低下、悪心嘔気、筋痙攣などをきたし、透析の継続が困難となる病態です。この透析困難症が生じた場合の患者さんへの悪影響は、ドライウェイト(dry weight)に達しない除水不十分な状態で透析を終了しなければならないことです。

透析困難症の要因

透析困難症の要因は多く存在します。
透析低血圧、透析に対する心因反応、不均衡症候群、透析器材の生体適合性など、これらの要因が単独、複数により症状を呈します。

透析困難症に対する予防・対処(医師、看護師の役割)

このような透析困難症の予防として医師は、心疾患や感染症などの透析に関連しない基礎疾患の管理や透析処方の調節、患者さんが服用している降圧剤の量や種類、内服のタイミングを検討したり、看護師は過度な除水速度をかけないためにも食事指導や水分調整の指導、内服薬の指導を行います。

また、発症時の対処として医師は、透析中の昇圧剤や高浸透圧液の補充などの薬剤投与、透析の中断やECUMへの変更・指示を行います。看護師は、透析ごとに患者さんに負担にならないように除水の管理を医師と共同で行います。このような対策を講じても繰り返し透析の継続が困難な状況に至ると透析の中止を医師や看護師の両者により判断します。

透析困難症の心身への影響

透析困難症を発症し透析の中断・中止をすることは、次以降の透析治療にも影響を及ぼします。ドライウェイトに達しない除水不十分な状態で透析を終了すると、次回の透析においても引き残した水分量を合わせ除水をかけるためドライウェイトまでの体重コントロールが困難な状況となり、再び治療中に症状が出現し、改善しないまま透析を中断・中止を繰り返し、透析困難症を発症します。
このことから患者さんは、透析は辛い苦しいものであると認識し、また透析の中断・中止により除水不足に関連した心不全の発症や透析不足による病態の悪化、さらに治療そのものや看護師による教育指導の受け入れを困難とさせ、これらが複合し、患者さんQOLの低下を招きます。このことから看護師は透析困難症を発症させず、患者さんに指示透析を達成させる必要があります。

「透析困難症 リスクスコア」:
DSR スケール(Dysdialysis Syndrome Risk Scale)について

透析困難症リスクスケールを使用することにより透析困難症の発症を治療前から看護師が予測することで、患者さんに注意を傾け、より個別性ある除水計画を立案することができるのではないかと考えました。このことは、透析を中断、中止することなく指示透析を達成することにつながると考えます。
また、発展的な可能性として、この透析困難症リスクスケールを使用し、その結果を患者さんと共有することで、患者の自己管理意識の向上につながることや振い分けされたリスクのある患者さんを中心にスタッフを計画的に配置したり、突発的な患者の愁訴や、発症を回避することが可能になること、発症時に使用していた薬剤の使用や、特殊透析への移行などを低減し、透析医療費の削減を図ることができると考えます。

「透析困難症 リスクスコア」:
DSR スケール(Dysdialysis Syndrome Risk Scale)の独創性について

透析困難症の成因や病態、患者さん個人の特徴から透析困難症の予測に着目しました。透析困難症を引き起こす様々なリスク因子から最も発症に影響のある因子を明らかにしまし、看護師が定期的に得ることができる検査データや患者さんの自覚症状を活用してリスクスケールを作成しました。

「透析困難症 リスクスコア」:
DSR スケール(Dysdialysis Syndrome Risk Scale)の活用方法

1) 透析困難症の発症のリスクを考慮した透析治療条件の変更を立案することができます。
2) 生理学検査データの更新毎に本スケールを使用し継続的なリスクの判断につながります。
3) 患者さんと結果を共有することで透析困難症の発症の可能性を意識づけ、自己管理意識の向上に活用できます。